【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)

エレベーターが目的の(フロア)に着いた。

「こちらの階は全五戸で、エントランス側の棟が二戸、反対側の棟が二戸、そしてその間をつなぐ棟に一戸あります。
そして、本日ご紹介します私どもがお預かりしている物件は、反対側の方のお部屋となります。
本来はお部屋の直近のエレベーターを利用しますが、本日はレジデンス内を合わせてご説明するということで、連絡通路の内廊下を利用いたしますね」

先にエレベーターを出た大橋氏が、その手で扉を押さえながら言った。

「これから向かうレジデンスの反対側は、公園になっておりまして、たいへん閑静な環境ですよ」

そして、簡単に(だけど、すっごくわかりやすく)その公園の説明をしてくれた。

なんでも江戸時代には東北の大名の下屋敷が置かれていたのだそうだが、明治に入るとさる宮家の御用地となった。
ところが後継に恵まれず、その宮家が廃絶されてしまった。
そのため、御用地を引き継いだ別の宮家によって昭和初期に当時の東京市に寄贈され、以後は公園として使われるようになったらしい。

もともとの宮家の御名を冠したその公園は、今では一般庶民たちの憩いの場になっていた。


エントランス側から公園側へ向かう通路も、やっぱり一流ホテルのようだった。
一足ごとにふかーっと沈む絨毯の上を歩いて大橋氏のあとをついて行く。

ふと窓から目を落とすと、一階の中庭が見えた。
先刻(さっき)通ったエントランスの奥にあたるところだろう。
いくつか、オープンカフェみたいなテラス席があり、その傍らには芝生の広がる広場があった。

「オープンカフェをご利用される際は、コンシェルジュがベリーヒルズビレッジ内のご希望の飲食店からお食事を手配させていただきます。
また、コンシェルジュは全員バリスタの資格を持っておりますので、コーヒーだけでしたらすぐにご用意できますよ」

——えっ、そうなんだ!

あぁ、お休みの日、こんなところでブランチなんてステキだろうなぁ……

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