【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
開けられた扉の向こうには、広大なリビングが広がっていた。
——いったい、何畳くらいあるのかな?
「奥のキッチンとダイニングスペースを併せますと、約六〇畳の広さですね」
——ろっ、六〇畳ぅ⁉︎
一坪が約二畳なので……約三〇坪の実家の敷地が、まるごとすっぽり入ってしまう。
「あ、あの……ここは、モデルルームかなにかですか?」
がらんどうの部屋を想像していたのだが、リビングスペースにはソファとローテーブルが、キッチンとダイニングスペースにはダイニングテーブルとチェアがすでに備わっていた。
「家具類は現在の所有者様の持ち物なんですよ」
——売りに出されてる「預かり」物件だものね。
「スウェーデンやデンマークなどの北欧家具専門のセレクトショップ・Majaで揃えられていましてね。どれも、なかなか手に入らないヴィンテージの数々だそうですよ」
ナチュラルな白木の家具と無機質な黒のアイアンの家具がほどよく配置されていて、奇抜になりがちな幾何学模様のファブリックが違和感なく添うている。壁や棚には現代アートの絵やオブジェがさりげなく飾られていた。
いかにも都会的で洗練されたインテリアだった。
「冬の長い北欧では、家の中で快適に過ごせるようにインテリアを充実させるそうですね。
Majaのスウェーデン出身の社長にこの部屋のコーディネートを依頼したそうですよ」
確かにオシャレではあるのだが、近寄りがたいほどの冷たい雰囲気はまったくなく、それどころか、どこかなんとなくほっこりするのは……
——そうか、北欧家具だからか。
「実は、もし次の所有者様が気に入られたのなら、このままお譲りしてもいい、とおっしゃっていましてね」
——ええぇっ、いいの⁉︎
ど庶民のあたしには、こんな贅沢な空間になにを置いていいのかわからない。
——この居抜き物件、最高じゃん!