【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)

「……お客さま、お飲み物は大丈夫でしょうか?」

艶やかな黒髪をオールバックにし、左耳にダイヤのピアスを輝かせたイケメンが、艶冶(えんや)な笑みを浮かべてあたしに尋ねてきた。

このスペインバルの若きオーナーの杉山(すぎやま)氏だ。

背筋をすっ、と伸ばしてやたらと姿勢がいい彼は、まだ二十代の半ばであるにもかかわらず、すでにバーテンダーの世界大会で優勝している若手の有望株だという。

実はあたしがこのスペインバルに来たのは初めてではない。同じショッピングモール内で店舗を構えている我がJubilee(ジュビリー)の呑み会にもよく使われている店だった。

国内でトップシェアを誇るファミリーレストランチェーンの御曹司にもかかわらず、杉山氏は自らお台場の外資系ホテル内にあるバーなど都内に何軒もの店を興していた。
そのため、なかなか多忙らしく、ベリーヒルズビレッジのこのバルで「会える」ときは、あたしたちにとって「当たり」の日だった。

イケメン御曹司の魅惑の笑みに「直撃」されて、思わず頬が火照(ほて)ってくる。


「ありがとう、(かける)君。
なにか用があるときは、また声をかけるよ」

中谷氏が穏やかに微笑む。
彼の知人だというのは杉山氏だった。

(かしこ)まりました……中谷さま」

杉山氏もにっこりと微笑み返す。

「では、お連れさまもごゆっくりお過ごしくださいませ」

そして、さらにいっそう艶冶な笑みを向けて一礼すると、すーっと下がっていった。


「……ところで、小林さま、
レジデンスを内覧されて、どうでしたか?」

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