【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)

「ものすっごく、気に入りましたっ!」

あたしは(こぶし)を握りしめて力説した。

「建物は豪華だし、前の住人が譲ってくれるという家具などもすごくオシャレで洗練されていて、とっても素敵でした!
それに職場からも超近いし、あらゆるものがベリーヒルズビレッジで揃って便利なので、申し分のない物件です!
ぜひ住んでみたいと思いました‼︎」

興奮のあまり、頬が紅潮する。

「そうですか。それはよかった」

中谷氏は目を細めて微笑んだ。大人の笑みだ。

「では、なにを躊躇されているんです?
失礼ながら、もし購入金額のことでお困りでしたら、小林さまが当行でご預金を継続してくだされば、それを担保にしてご融資するという方法も取れますが。
まぁ、『上』の方はあなたには融資よりも投資の話を勧めるよう私に言ってくるでしょうが……」

——あぁ、こんなに親身になってくれるんだもの。やっぱり、中谷さんには包み隠さず言ってしまおう。


「……実は……」

今まで朱を差していた頬が、さーっと冷めていく。

「あのレジデンスには入居するための『条件』があるらしくて……
残念ながら、あたしはその条件には満たされてないそうなんですけど……
ただ、ラッキーなことに、内覧した物件がその条件付きなんです。
しかも……売り主の希望に添えば、なんと『半額』になるそうなんです」

「えっ?」

中谷氏の目が見開く。

「……突拍子もない話ですよね?」

あたしは力なく、ふふっと苦笑いした。

「いえ、どうぞ続けて話してください。
あなたに大橋不動産を紹介した手前、私にも責任があります」

テーブルの向こうの中谷氏が、身を乗り出して前傾姿勢になる。

「……売り主の『希望』とは、なんですか?」

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