【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)

あたしは中谷氏に言われるがまま、婚約指輪(エンゲージ)を用意するために、奥のサロンルームを出て表にある店舗へと向かった。

すでに営業時間後なので、店舗には河上店長と警備員しか残っていない。

「あぁ、小林さん。
……あの『サプライズ』のお客様、どんな感じ?ご購入していただけそう?」


あたしが「結婚」することは、なるだけ会社にはギリギリまで告げたくなかった。

なので、中谷氏には本当に申し訳ないが、今だけ独身に戻ってもらって、つき合っている彼女に『サプライズで指輪を渡し、プロポーズしたい』という男性のお客様として、来店してもらった。

「久城さんのデザインを、たいへん気に入っていただけましたよ。
それで……エンゲージも見せてほしいとおっしゃって……」

「ほら、だから言ったでしょ?
プロポーズするんだったら、ふつうエンゲージをプレゼントするでしょうよ。
それで、OKしてもらったら、今度は二人でマリッジを選びに来るものじゃない?」

店長のごもっともな「指摘」に、あたしはただ苦笑するしかなかった。

——どうせ、形ばかりの「白い結婚」になるからと、あたしが「遠慮」したのが(あだ)となっちゃったなぁ……

「まぁ、どうせ『男性あるある』で、結婚指輪と婚約指輪の違いがわからなかった、ってクチでしょ?」

「はぁ……まぁ、そうですね……」

あたしはテキトーに話を合わせた。

「じゃあ……はい、これ。
そんなことだろうと、あなたが持っていったマリッジと同じシリーズのものを見繕っておいたわ」

店長がベルベットのホルダーを差し出す。

「あ、店長、助かります!ありがとうございますっ!」

「あのお客様、身なりや雰囲気から見てかなりの方ね。だから、今店舗にある中でダイヤ()のいいのを中心に揃えてあるわ。
ご購入してくだされば、今月はあなたが営業トップになれるかもよ?がんばってちょうだい」

ホルダーを受け取ったあたしは、店長に深く頭を下げて再度礼を述べ、それから中谷氏の待つ奥のサロンルームへと急いで戻った。

< 56 / 136 >

この作品をシェア

pagetop