【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
あたしは中谷氏に言われるがまま、婚約指輪を用意するために、奥のサロンルームを出て表にある店舗へと向かった。
すでに営業時間後なので、店舗には河上店長と警備員しか残っていない。
「あぁ、小林さん。
……あの『サプライズ』のお客様、どんな感じ?ご購入していただけそう?」
あたしが「結婚」することは、なるだけ会社にはギリギリまで告げたくなかった。
なので、中谷氏には本当に申し訳ないが、今だけ独身に戻ってもらって、つき合っている彼女に『サプライズで指輪を渡し、プロポーズしたい』という男性のお客様として、来店してもらった。
「久城さんのデザインを、たいへん気に入っていただけましたよ。
それで……エンゲージも見せてほしいとおっしゃって……」
「ほら、だから言ったでしょ?
プロポーズするんだったら、ふつうエンゲージをプレゼントするでしょうよ。
それで、OKしてもらったら、今度は二人でマリッジを選びに来るものじゃない?」
店長のごもっともな「指摘」に、あたしはただ苦笑するしかなかった。
——どうせ、形ばかりの「白い結婚」になるからと、あたしが「遠慮」したのが仇となっちゃったなぁ……
「まぁ、どうせ『男性あるある』で、結婚指輪と婚約指輪の違いがわからなかった、ってクチでしょ?」
「はぁ……まぁ、そうですね……」
あたしはテキトーに話を合わせた。
「じゃあ……はい、これ。
そんなことだろうと、あなたが持っていったマリッジと同じシリーズのものを見繕っておいたわ」
店長がベルベットのホルダーを差し出す。
「あ、店長、助かります!ありがとうございますっ!」
「あのお客様、身なりや雰囲気から見てかなりの方ね。だから、今店舗にある中でダイヤのいいのを中心に揃えてあるわ。
ご購入してくだされば、今月はあなたが営業トップになれるかもよ?がんばってちょうだい」
ホルダーを受け取ったあたしは、店長に深く頭を下げて再度礼を述べ、それから中谷氏の待つ奥のサロンルームへと急いで戻った。