【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
「中谷さん、たいへんお待たせしました」
奥のサロンルームに戻ったあたしは、頭を下げて詫びた。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
鷹揚に構えた中谷氏が、飲んでいたコーヒーをソーサーに戻しながら言う。
「では、早速選びましょう。
とりあえず……結婚指輪と同じシリーズから見てみましょうか?」
あたしはマリッジと同じVinculaのシリーズの婚約指輪を抜き取り、左手薬指につける。
「あぁ、やはり婚約指輪は、ダイヤモンドが中心にあって華やかですね」
目を細めて、中谷氏がリングを見つめた。
——奥さんに贈ったときのことを、思い出したのだろうか……?
そしてその後は、リングホルダーに並ぶエンゲージを次々と指にはめていったのだが……
「やはり同じシリーズのものが、マリッジと重ね付けしても違和感ないのでいいですね」
上のエンゲージと下のマリッジとの隙間がまったくなくピッタリと収まっているため、まるで一本のリングに見える。
それにデザイン的にも、エンゲージとマリッジのそれぞれのダイヤモンドの位置が絶妙だ。
はじめから重ねて使うことを意識してつくられたセットリングならではである。
「そうですね。両方おつけになると、いっそう華やかになってとても映えますよ」
中谷氏も賛同してくれた。
「じゃあ、エンゲージはこれにしま……」
「でもですね」
——えっ、なんでしょう?
「なんだか少し……ダイヤが小さく感じませんか?」