【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)

「……こんな感じで、どうですか?」

ヘアメイクの両方を終えた及川氏が、あたしの身体(からだ)を覆っていたクロスをしゅるっと外しながら尋ねる。

——えええっ、これが、あたしっ⁉︎
恐るべし、プロの「神技」!

肩までの中途半端な長さの髪は、決して「ギャル盛り」にはならずに、ふんわりとゆるかわアップされ、ホンモノの花々によって明るく彩られている。

ベースメイクはこれでもかというほど、入念に丹念に施されているにもかかわらず、透明感あふれる赤ちゃん肌の超ナチュラルメイクになっている。

つけま(・・・)とマスカラで信じられないほどボリュームアップした上に、長くもなった睫毛(まつげ)は「くるんくるん」だ。
思わず突っつきたくなるほど、ぽってりと愛らしくなったくちびるは「ぷるんぷるん」である。

さらに、パーティであることを鑑みてアイシャドウやチークに忍ばせた「キラキラ」が、照明に乱反射してひときわ華やかさを放っていた。


「……あら、いいじゃない!
ドレスに合ってるのは言うまでもないけど、花嫁さんの初々しさと幸せ感がすっごく感じられるスタイリングだわ」

別室でパーティ用の(きら)びやかなドレスに着替えたあと、つい先刻(さっき)隣のブースでヘアメイクを終えた華絵さんが、感嘆の声をあげる。

——『初々しさ』はともかく、あたし自身には『幸せ感』なんて皆無なのに、見る人にそう思わせるなんて……まさしく「神」じゃん!

「さすがだわ、及川くん。
あなたにお願いして、本当によかったわ」

久城さんからもお褒めの言葉が出た。
彼女もすでに他を圧倒するほど妖艶でゴージャスな「パーティ仕様」になっていた。

それにしても、さすがに手慣れているのか、彼女たちはものすごく支度が早い。


「ほんと……あいつ(・・・)なんかと結婚するなんて、
……もったいないくらいよ」

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