【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
Chapter ❻
「……ちょっと、直仁、『初めまして』ってどういう意味?
まさか……美々ちゃんとは初対面っていうんじゃないでしょうね⁉︎」
華絵さんが身を乗り出して詰め寄る。
「それこそ、『まさか』ですよ。
もちろん何度もお会いしてます。彼女の左手薬指に輝く婚約指輪も一緒に選びましたしね。
ただ……本当の名前で彼女に会うのは、今夜が初めてというだけです」
ソファの背に上体を任せてゆったりと座っている中谷氏——万里小路氏は、いっさい気圧されることなくそれを躱す。
「あなた、まさか……彼女にはずっとお母さんの旧姓を名乗っていたんじゃないでしょうね?」
久城さんが、まるで得体の知れない化け物を見るような目をして鼻白む。
「いけませんか?
仕事上ではこんな派手なファミリーネーム、百害あって一利なしなんでね。
……華絵さんも、結婚する前まではそうではありませんでしたか?」
華絵さんは、うっ、と詰まってなにも言えなくなった。どうやら、図星らしい。
「名前の方も、生まれてこのかた初対面の人から『なおひと』以外に読まれたことがないので、今までよく間違われてきた『真人』と名乗ることにしました。
……礼子さんも子どもの頃から、どうして『れいこ』としか読めない漢字をつけたのか、と憤慨してましたよね?」
今度は久城さんが、うっ、と詰まる。こちらも図星らしい。
「そろそろ……彼らを二人きりにしてはいただけませんか?
これから、婚約パーティの『打ち合わせ』をしなくてはいけませんのでね」
大橋氏から、両者にとっての「助け舟」が出された。
「私ではご不満かもしれませんが、お嬢さま方をバンケットルームまでエスコートしましょう」
そして、にっこりと「王子さま」のような優雅な笑みを浮かべた。