【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
「……わかったわ」
久城さんが応じた。
華絵さんの顔が「えっ?」となった。
「その代わり……典士くん、
今度、うちの社長に会ってくれるわね?」
——『うちの社長』って、Jubileeの鮫島社長のことだよね?……なんで、そんな話になるの?
そう思って大橋氏の方に視線を移すと、彼の顔が先刻までの微笑みが幻だったかのように、強張っていた。
「……どんな流れ弾だよ?」
大橋氏は低い声で独り言ちると、ぎろり、と万里小路氏を睨んだ。
「悪いな。……思うところはいろいろあるだろうが『親友のために』善処してくれ」
万里小路氏は口ではそう言いながらもいっさい悪びれることなく、にやり、と笑って言った。
——万里小路さま……「中谷さん」って、こういう人だったっけ?
「本名」を明かされずに話を進められていたことは、もちろんショックだが……
それよりも彼に対しては、あたしが困ったときにいつも力になってくれて、こんなに親切な人がいるなんて、と思っていただけに……
なんだか……人間不信になりそうだ。
そうして、大橋氏にエスコートされて久城さんと華絵さんが部屋から退出し、あたしと万里小路氏は二人きりとなった。