【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)

「……時間がないので、手短に言いますね」

——そうだ、先刻(さっき)大橋さんが『これから、婚約パーティの打ち合わせをしなくては』いけないと言ってたっけ。

「今夜のパーティでは、あなたには私の両親に会ってもらいます。それから、私には妹が一人いるんですが、結婚して夫の仕事の都合で今は海外にいるため、今夜のパーティには出席できません。
そして、あなたのご両親なんですが……」

——ああぁっ、「結婚する」というのに、両親にはなに一つ話してなかったっ!

「……こちらの方で用意しましたので」

——はい?

「舞台を主にしている役者に依頼しました。
だから、あなたは彼らに調子を合わせているだけでいいですよ」

——えっ、ほんとにそれでいいのだろうか……?


「もしかして……本当のご両親に出席してほしかったですか?」

「あっ、いえ……それは……」

家族に隠れて職場のオンナとずっと不倫している父親にも、日がな一日ワイドショーやドラマの再放送に明け暮れ口を開けば不平不満の母親にも、来てほしいとは思わない。

「そうでしょうね。
……調べたところによると、家族関係は決してうまくいってるわけではないみたいですしね」

——『調べたところによると』?

思わず怪訝な顔になる。

あたしは「中谷さん」には自分の家族の話はいっさいしていない。
だから、知りたければ興信所などで調べてもらうしかないのだろうけれど……


「そりゃあ、調べるでしょう?」

さも当然のことのように、万里小路氏はフッと笑った。
穏やかに微笑んでいた「中谷氏」のときとはまったく違う、皮肉めいた乾いた笑い方だった。


「紙の上だけとはいえ……あなたは私の『妻』になるんですから」

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