【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
万里小路氏が顔を強張らせた。
——や、ヤバい。
だが、そのあとにっこりと笑顔を見せた。
「……確かに私は、彼のような『童顔』ではないと心得てはいますが、三十三歳の年相応の風貌だとは思いますよ?
二十五歳のあなたからは『オジサン』にしか見えないでしょうけどね?」
——だけど、まーったく目が笑ってないんですけれども……
だってだってだって……大橋氏はどう見ても二十代半ばにしか見えないんだもの。
それに対して、万里小路氏はどう見ても三十代半ばにしか見えなかった。幼い子どもの一人や二人いても全然おかしくない。
「えーっと……そうだ!
『中谷さん』は、銀行では部長さんで落ち着いた雰囲気だったし……
それに……ずっと結婚指輪をしていたじゃないですかっ⁉︎」
あたしは意を決して反論した。
「自分自身の力を試したくて『万里小路』の息のかかったアディドバリューには入社せず……それでも、社外取締役は渋々引き受けさせられましたがね……せっかく銀行に入行したっていうのに、結局は『万里小路』の七光によってこの歳で『部長』に抜擢されてしまいましたからね」
万里小路氏はうんざりした顔になって、ソファの背もたれにぐーっと上体を沈めていった。
「二十代の後半あたりから『既婚者』になりすましていますが、銀行ではその方がなにかと都合がいいんですよ。
特に年配の顧客には、それだけでぐっと信用される上に、なぜか投資相談の席にいっしょに姿を見せる彼らの嫁き遅れた娘や孫娘を『排除』できますしね」
そして、鼻でフンと笑った。
「……あなただって、そんな私のことを信じていたではありませんか?」
——うっ、それを言われると……二の句が継げない。
それにしても、今まで抱いていた「中谷さん」のイメージが、こっぱみじんこに砕けていく……