【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)
ようやく御目通りを終えると、ホッとする間もなく今度はあちらのご両親と、うちの「両親」を交えての初対面である。
万里小路氏が「婚約パーティの日に初めて会うのはいささか非常識かもしれないが……」と言いつつも、互いの家族の紹介をしたとたん——
「まぁ……こんなにかわいらしいお嬢さんが、うちの直仁なんかと結婚してくださるの?」
これから「姑」になる万里小路氏の母親が、おっとりした口調で尋ねてきた。
裾に二羽の丹頂鶴の総刺繍が施された、五つ紋の黒留袖をお召しだ。
着物のことはよくわからないが、そのこっくりとした黒地の風合いから見ても、たぶん相当な代物であろう。
「『直仁なんか』とは、実の母とは思えぬお言葉ですね」
万里小路氏が眉を顰める。
「あら、だってあなたのような性格のひん曲がった息子にお嫁さんが来るだなんて、わたくし今でも信じられないんですもの」
「そういう息子に育てたのは、お母さん……あなたじゃないですか」
「まぁまぁ、二人ともよさないか。
美々さんのご両親がいらっしゃる前で……」
これから「舅」になる万里小路氏の父親が、呆れた口調で妻と息子を諭す。
ショールカラーの黒のタキシードをお手本のように着こなしたロマンスグレーの彼は……まさに「子爵さまの末裔」だった。
「直仁の妹の愛璃子が海外にいて、今日は出席することができなくて申し訳ないね。
でも、結婚式には駆けつけると言ってるから、許してやってほしい」
「お父さん、帰国させる必要はありませんよ。
身重なのに、なにかあったら夫がうるさいですからね。愛璃子には出なくていいと言っておいてください」
顔立ちと背格好はよく似た万里小路家の父と息子なのだが……
——穏やかそうな性格は、残念ながら遺伝しなかったみたいね。
「もう、直仁ったら……
急なことでびっくりはしたけれど、うちはおめでたいことが重なって、主人もわたくしも喜んでおりますのよ」
万里小路氏の母親が、あたしと「両親」を向いて微笑んだ。
そして、嫋やかに頭を下げられた。
「美々さん、こんな可愛げのない息子に育ててしまって申し訳ないけれど……直仁のこと、末永くよろしくお願いします」
——またもや、懇願されてしまった。