はなうらない

その一歩を踏み出そうとした時、携帯のバイブ音が聞こえた。
ポケットから取り出し、液晶画面を見る。

有明だった。

『あ、もしもし、こんばんは』
「こんばんは、どうしました?」
『お土産は買えたかと思って』
「おみや……あ」
『忘れてたな?』

つい一時間程前までは覚えていたのだけれど。
今までの一時間に色んなことが起こりすぎて、全部頭から抜けていた。

『まー別に良いですけど、遅いし気を付けて帰って』

有明の声に優しさを感じて、急に帰りたくなってしまう。

別にここは砂漠でもサバンナでもないけれど。
どこか遠い場所のように感じた。

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