はなうらない

「実は終電を逃しまして」
『マジかよ』
「お土産は明日買います」
『迎えに行く? 明日仕事ねーし』

トン、と足音がして前を見る。
八橋さんが片方の肩を壁につけて、こちらを射るように見ていた。

来てもらって良いですか。
と、返事が出来たらどんなに良いだろう。

この状況下で、私が逃げ帰ったならば、この人は大事な何かを失ってしまう気がする。
それを見るのは、嫌だった。

「いえ、大丈夫です。明日帰ります」
『了解。じゃあお土産』
「忘れず買います」

電話を切って、足を踏み出す。

「恋人ですか?」
「違います」

即答する。

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