はなうらない
こころのきょり
よく眠ることが出来ず、洗面台の鏡に映った隈が酷い。
それを必死にファンデーションで隠す。
廊下に出ると、八橋さんがいた。当たり前だ、八橋さんの家なのだから。
「おはようございます、早いですね」
スーツじゃない格好に一瞬息を止めてしまう。私は乙女か。
いや、乙女じゃない。
「おはようございます。始発出てると思うので……」
「送ります」
「い、いいです。一人で行けます」
遠慮でなく断り。八橋さんはぼーっとした顔でそれを聞いて、リビングへと戻っていく。
返事がないということは、肯定なのか。