はなうらない
はざくらがわらうきみ

近所の桜が散った。
祖母の家だったものが段々と自分のものに変わっていく。

庭の花に水やりをしていると、携帯が震えた。

すぐに画面を見る。麦前から。それに少し落胆する自分が最低だと思う。

あれからもう一度電話してみたけれど、八橋さんから連絡はない。

「もしもし」
『あ、正武? 今大丈夫?』
「うん、庭で水やりしてた。どうしたの?」

声を聞くと、罪悪感は吹っ飛んだ。

『最近こっち来る用事ないの? 一緒に飲もうよ』
「上司が本社に異動になったからかな。飲みたいねえ」

ふと、尋ねようか躊躇う。

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