はなうらない

携帯を放って、庭をぼんやり見る。季節は夏へ変わっていく。条件が揃えば花は咲く。咲かない花は、条件が揃っていない。

私は自分で条件を揃えられるのに、咲かないばかりだ。

「……何でこんなになっちゃったんだろう」

前は式に出る自分が想像できた。でも今はできない。

八橋さんとの距離が、近づきすぎた。

八橋さんが私のこと、好きなんて言うから。

他人の所為にして、段々と腹が立って、携帯を掴む。これはもう、本人に直接「おめでとうございます」と嫌味たらしく言うしかない。

『おかけになった電話番号は……』

それも叶わなかった。

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