はなうらない

祖母の家を継いだ私と、方や本社近くのレジデンスに住む八橋さん。同期で組まされることが無ければ、交わることすらなかっただろう。

缶ビールを開け、グラスに注ぐ。

「あ、その同期のこと好きだったとか?」

有明がぽん、と思いついたように言った。
籾野さんが眉をぴくりと動かしたのが見える。

それを他人に指摘され、じわりじわりと視界が歪んだ。

う、と声が漏れて、手で顔を覆う。

「有明さんの無神経」
「俺の所為?」
「正武さん、飲みましょう。飲んで忘れましょう」

アルコール消毒です! と非科学的なことを言って、籾野さんはグラスに更にビールを注いでくれた。

< 139 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop