はなうらない
初夏も過ぎた頃、私は麦前との旅行の計画を立てようと思っていた。お盆になる前には計画立てて、夏の終わりくらいには行けたら良い。
就業終わりに本屋に寄って、旅のガイドブックを買う。旅行なんて久しぶりだなと思いながら、横断歩道で立ち止まる。
ぽつり、と水滴が腕に当たった。
え、と空を見上げるとパラパラと小雨が降り注いだ。夕立、というには遅い。天気予報では言われていなかったから、通り雨だろう。
突然の雨に、元々人気の少ない駅の周りから人が居なくなった。
私は買ったガイドブックを鞄にしまい、奥底に入れっぱなしだった折り畳み傘を取り出す。