はなうらない
サーっと降る小雨が頬に当たり、雫になって顎から落ちた。
涙じゃなくて良かった、と思った。
いや、涙でも分からなかったと思う。
きっと、分からない、はずだ。
頬に伝って落ちる雫を手の甲で拭い、私は傘を開いた。
「濡れちゃいますよ」
私の幻に、傘を差し出す。
……幻じゃなかった。
家に帰る途中で小雨はあがった。私の後ろをてくてくとついてくる幻は、玄関で靴を脱いで、靴を揃えた。
「お邪魔します」
しっかりそう言って、家にあがった。