はなうらない
ぐっすり眠っているので、起こさずに出た。
家の鍵と一万円と、昨夜のご飯が冷蔵庫の中に入っていることを書き置きした。
「有明さん、私の腕抓ってください」
「え、嫌だ。セクハラで訴えるつもりだろ」
「なんか昨日の帰りから頭がふわふわしてて」
「熱か? 帰れば?」
怪訝な顔を向けられる。私は何度も昨夜から腕を抓りまくって、一部内出血すらある。
痛いに決まっていた。
遊ぶ約束、婚約者、結婚、というワードが頭をぐるぐるしている。
流石に無断欠勤になっていたら騒ぎになるだろうと考えて、麦前に電話をかけてみた。