はなうらない

それを言って良いものか、また考えて、言い淀む。

『正武?』
「あのさ、八橋さんって結婚するんだよね? この前言ってた、婚約者と」
『なんかそれが』

麦前の電話口の音が静かになる。どこかに移動したらしい。

『一族で色々揉めた? らしいって噂。ほら、八橋さんって旧財閥の家でしょ?』
「揉めた?」
『詳しいことは分かんない。清水さんからちらっと聞いた話』

揉めたって、誰と、婚約者と? いや、それ以前の話?

詳しくは知らないという麦前に詰め寄ることは出来ず、お礼を言って切った。
毎回、麦前を窓口にして申し訳ない。

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