はなうらない
廊下を歩いて、居間に入る。雨戸が全部閉められていた。
台所に入ると、鍋が火にかけられていた。
「あ、おかえりなさい」
下から声が聞こえて驚く。そちらを見ると、八橋さんが冷蔵庫の隣に座って、分厚い料理本を開いていた。
それは祖母が買ったもので、和食百科らしい。大抵の和食のレシピが載っている。
驚きと謎の多さに、それを見て固まっていると、八橋さんが立ちあがった。
「夏野菜のカレーを作ってみました」
確かに、家に入った時からカレーの匂いはしていた。
鍋の中に視線を向ける。カレーがぐつぐつしている。