はなうらない
八橋さんは麦茶を飲み、グラスを置いた。
いつかの、あの様子と重なる。
「ハキになりました」
そう宣った。
「ハキ」
「婚約」
「この会話、前もしませんでしたっけ? 私の思い違いじゃなければ」
「しましたね。去年の夏です」
もうあれから一年経ったのか、という思いと、一年しか経っていないのか、という思いが同時にくる。
「いえ、去年の婚約者の方の話じゃないですよ?」
「はい。でもよく知ってましたね、麦前さんから聞きました?」
「……八橋さんの携帯が、繋がらなくなったときに」
答えた。