はなうらない

綺麗だ。

「綺麗だ」

すぐ近くで声がして、縁側まで八橋さんが来ていた。

同じことを同じ物を見て、同時に思うなんて。
それが少し可笑しくて笑う。

「俺にやらせてください」

八橋さんがこちらに手を伸ばす。

やりたいのなら、とホースを渡そうとしたが、自分の手に土がついているのに気付く。
渡す前に、それを引いた。

「ん?」
「あ、いや、私がやります」

綺麗な手に触れられない。

それに背を向けて、花に水をやっていく。
連日の晴れに、土が乾いている。

日が傾き、夜がやってくる。

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