はなうらない

水やりを終えて振り向けば、八橋さんは縁側にも居間にも居なかった。
ホースを片付けて、縁側に入り、雨戸を閉める。

台所から出汁の香りがする。

後ろから背中を見た。
私より、この家の台所に歓迎されている。

「昨日、ちょうど鮭が安かったんです」

くるりと振り向き、八橋さんは楽しげに言った。
知ってる、鮭が安くなっていると知ったうえで私はリクエストした。

「何か手伝いますか?」
「じゃあテーブル拭いて、テレビでも見ていてください」
「はーい」

最初に八橋さんがここに来たときと立場が逆になっている。

< 165 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop