はなうらない

私が縁側近くで水やりをしていた時のこと。
ふとそれを思い出してしまった。

「八橋さんに意地悪をして、水やりさせなかったわけじゃないです」

今更な弁解。

「気にしてないです、全然」

八橋さんは微笑んだ。

「……八橋さんは、もしかして、あんまり自分が好きじゃないんですか?」

ふと心を過ぎった疑問を口にした。

車内に沈黙が降りる。

はっと我に返って、エンジンをかける。

「なんて、あはは」

誤魔化すように紡いだ言葉が虚しい。
八橋さんの方は見ることが出来ず、シートベルトをした。

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