はなうらない

「どうしてむかついたんですか」

尋ねられる。私は少し考えて、正直に答えることにした。

「八橋さんがどこかの御令嬢と結婚するって話を聞いたからです」

おにぎりを膝に置いて、タッパーに詰めた卵焼きを箸でつまんだ。

「私は八橋さんが好きなので」

瞬間、黒い影が横をすごい速さで通って行った。
私の持っていた箸が足元に放り出される。何が起こったのかと周りを見回した。

「卵焼き……!」
「鳶ですね」
「え、うわ一杯いる」

私たちのお弁当を狙っているのだろう。上空を何羽かぐるぐると回っている。

< 193 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop