はなうらない

人事部に八橋さんは必要な人材だ。私でさえ引き止められたのだから、上司たちがそれを止めないはずがない。

「蔵馬さんから久我のことは聞きましたか?」
「おおまかに、ですけど」
「うちの本社が入ってるビルも、俺が住んでいる場所も、久我グループのものなんです」

つまり、だ。

「上の懇意を無視すれば退けられる。親からも悪い話じゃない、考え直せと言われたんですけど。もう嫌だと思って」
「嫌?」
「見世物になるのは」

私は、八橋さんがここに来たとき、なんと思ったんだっけ。

ああ、そうだ。

この人は命からがら、逃げ仰せて来たんだ。

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