はなうらない

そうだ。春先に。
言われないと思い出せなかった。

「連絡できれば良かったんですけど、何か正武さんに飛び火したら嫌だと思ってしませんでした。そしてそのまま携帯を」
「ハンマーで」
「そうです。本当にすみません」
「何で謝るんですか? 今日一緒に遊びに行ってくれたのに」

夕日が射す。辺りを橙色に染め上げる。

ラムネ瓶の影が伸びる。

視線を感じて、ラムネから八橋さんへと移した。
綺麗な顔をしている。

「正武さんは魔性ですか?」
「いや、どこからそんな発想が」
「俺の嬉しいことばかり言うから」

はにかみながら肩を震わせているので、半分冗談だと受け取った。

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