はなうらない
八橋さんがこちらを見た。私たちの手は緩く繋がれている。
「何を?」
「これから無職になる予定の男が嫌になったら、いつでも」
「なんですかそれ。喧嘩売ってます?」
「目が笑ってないなー」
いつかの会話。私は手を握る。
「これからじゃないですか。これから、楽しいことがいっぱいです」
笑うと、八橋さんもつられたように笑う。
静かに顔を近づいて、触れるだけのキスが落とされた。
「ありがとう。本当に、お世話になりました。それから、これからもよろしく」
静かに微笑む。
その顔があまりに穏やかなので、何故か泣いてしまった。