はなうらない
ただいまといえるばしょ
手で涙を拭うけれど、次から次へと溢れ出る。
「そんな泣かなくても」
「違うんです。私、去年の夏」
ひとつ、言っておかなくては、と思っていた。
「八橋さんが、婚約破棄になったって、言ったとき、本当はほっとしたんです」
久々に飲んだ時に言われた言葉。
慰めるのと同時に、こみ上げた気持ち。
ずっとそれが引っ掛かっていて、認められなくて。
認めたら、逃げていた何かに捕まってしまいそうで。
「そんなことですか」
「そんなことって、軽い」
「俺も正武さんの婚活がうまくいかないように願ってたので、お互い様ですね」
え、今さらりと酷いことを言われたような。