はなうらない

合わせるように、八橋さんもこちらに掌を見せた。
何か言おうと口を開き、電車のアナウンスが響く。

すき、きらい。

人生は別れの連続だ。
誰かが言っていた気がする。

もしかしたら、また八橋さんと連絡が途絶えるかもしれないし。
もう二度と会えないかもしれない。

そんな暗い想像が一瞬頭を過る。

「正武さん、行ってきます」

八橋さんの声が聞こえた。同時に扉が閉まる。

すき。

好きだから、大丈夫だ。

私は電車が見えなくなるまで、ホームに立っていた。
ずっと、立っていた。




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