はなうらない

そんな会話を思い出した。
だから私は、蔵馬さんがいることに、とても安堵を覚えている。

「……ありがとうございます」
『何もしてないけど?』
「いつでも来てください。本当に何も、ありませんけど」
『二人の顔が見られれば十分。とりあえずイタリア行って、ニューヨーク行って沖縄行ってからになるから』
「飛び回りますね」
『その頃には結婚しててよ。琉球グラス、お祝いで持って行ってあげる』

気が早すぎる。あはは、と笑って誤魔化して通話を終えた。

支社に戻り、席につく。有明さんに確認を頼んでおいた資料が返ってきていた。

< 218 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop