はなうらない
持っているひとは、自分では気づかないものなのかもしれない。
もしくは、皆持っているのだと信じてやまないのかも。
「運んでくれて、ありがとうございます」
私だって、そうなのかもしれない。
終業は麦前の方が遅かった。営業本部はいつも残業をしているイメージがある。
「正武さんだ、ひさしぶりー」
学生のように自販機の前のソファーでだらだらと携帯を弄っていると、声をかけられた。
営業部主任、下野さんが自販機で缶コーヒーのボタンを押す。
「お疲れ様です」
「おつかれ、誰待ち?」
「麦前です」