はなうらない

会ってみて話してみて、漸く思っていたイメージが少し払拭された。

「正武さんの中の財閥イメージってどんなだったんですか」

逆に引かれた。

「長テーブルでワインをくるくるさせるような」
「どこの国の財閥ですか」
「正直、家柄を鼻にかけた嫌な奴が来たら面倒くさいとは思ってました」

私の言葉に、目の前の男は笑った。

それが五年前のこと。
他の同期が何人か辞めていき、私と八橋さんは残っていた。

「元気出ました」
「はや」
「肉が食べたい……」

そう言いながら、八橋さんはメニューを開いた。
とんとん、と戸を叩く音。最初に注文した料理が届く。

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