はなうらない
息を吐く。
今度は笑えなかった。
代わりに、喉の奥からこみ上げた熱さが落ちた。
「正武さ」
「祖母が、息を引き取ったそうです」
メイクが崩れる、と思って涙を止めようとするけれど、止まらない。
八橋さんがこちらに腕を伸ばす気配がした。首の後ろに触れ、身体が近づく。
波が引いては、寄せるように。
悲しみの底を覗いては、暗闇が広がるように。
誰かを失う昏さに、人間はいつ、慣れることが出来るのだろう。
身体に寄り掛かることもなく泣き続ける私の背中を、八橋さんは擦ってくれていた。