はなうらない
「はい、よろしくお願い致します」
内線を切る。殆ど片付いた机の上を見て、まだ物の残る引き出しの中を思い出す。
「正武さん、わらびさんに提示した企画なんですけど……」
「何かあった?」
「ここがこれじゃ駄目だって……」
「あー老舗だから、こういうのは嫌がると思う。一回話聞いてきた方が」
栃葉の顔を見ると、瞳がうるうるしているのでぎょっとしてしまう。え、今私そんなきついこと言ったかな。
社会人歴と人間歴が長くなるに連れ、言い方がきつくなることはある。自分の目線だけで物事を捉えるのは良くないことだ、と心に留めてはいるけれど……。