はなうらない
退職願を持って、ファイルにしまった。
「一旦、預からせてくれ。上に掛け合ってみる」
「掛け合うって」
「会社、辞めたいわけじゃないんだろ?」
その問いに、頷く。
それは、勿論。新卒から働いているし、仕事も楽しい。これからもっと楽しくなるだろう。できるなら手放したくない。
「そこなら地方の支社の方が近い。転職活動もまだしてないんだろ?」
「なんで分かるんですか」
尋ねると、ケラケラと笑われた。
「愛社精神が強いから」
「えええ」
「冗談だ」
更に笑って、会議室を出ていった。