はなうらない
うつくしきまち
祖母の家は山より海の方が近い。
異動前、有休を使って引っ越しを行った。
麦前が手伝ってくれて、何故か八橋さんが車を出してくれた。
なんか、今年はよく八橋さんと顔を合わせる機会が多かった。
「良い場所ですね」
海沿いを走りながら八橋さんは言う。
「遊びに来てください、いつでも」
私はそう返した。
鴬張りの廊下を歩き、雨戸を開ける。何坪か忘れたけれど、一人で生活するには大きすぎる平屋。
まだ家が、家主が変わったことに気付いていない感じがする。
祖母の気配が消えない。