はなうらない

すぐそこの植え込みに育った彼岸花を見る。
赤が綺麗。

迷っている内に、電話は切れた。

それに安堵する自分と落胆する自分がいた。
……自分で取らなかったくせに。

そして、再度それは鳴る。

「……もしもし?」
『お疲れ様です、仕事中でしたか?』
「昼休憩中でした。何かありました?」

二度も鳴らすなんて、何かあったのかと思って、結局出てしまった。

人事部に関わるとなると、結構重大だ。

『こっちは至って平和です』
「あ……そうでしたか」
『正武さんはどうですか』

電話の向こうの八橋さんは外にいるらしく、時折遠い場所で電車のアナウンスが聞こえる。

< 71 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop