はなうらない
祖母の家に住むと決まり、退職願を出した後、すぐに八橋さんから連絡があった。
「支社に異動になるんですか?」
居酒屋に入ると八橋さんはいつも入口側に座る。下座だ。最初のうちは何度か私がそっちに座りたいと言ったけれど、絶対に譲ってくれなかった。
注文より先に、八橋さんは尋ねる。
「……そういう運びになりました」
「結婚するんですか?」
「え、誰と」
「誰かと」
その誰かを訊いてるんですけど。
茶化そうと思ったけれど、そんな雰囲気じゃなかった。八橋さんは全然笑わない。
「結婚じゃなくて、引っ越しするんです」
なので、答えた。