はなうらない

ドリンクメニューを取って広げる。

「カシオレ飲みたいです。八橋さんは?」
「日本酒を」

いつものね、と注文ベルを押す。

「どこへ引っ越すんですか?」
「亡くなった祖母の家です。家って人が住まないとどんどん劣化していくから」

すぐに店員さんが来た。お通しを持ってきてくれて、お絞りを貰った。

八橋さんはこの世の終わりみたいな顔をしている。大丈夫か。

「それって正武さんが住まないといけないんですか?」
「まあ、私くらいしか独り身がいないので」

人事部だから遅かれ早かれ八橋さんに異動は知られるだろうとは思っていた。

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