はなうらない

目をパチクリさせて八橋さんがこちらを見た。

「正武さんはそれも継ぎそうだな、と」
「流石にこの歳になれば自分の得意不得意は分かりますよ」

笑ってしまう。

注文した料理が届いて、とりあえず乾杯する。私の異動に、引っ越しに?

「引っ越し、いつですか?」
「月末には移動します。持っていく物も少ないので」
「手伝います」
「いやそんな、大丈夫ですよ」

手伝ってもらう義理がない。と、最初に思った。
私と八橋さんはただの同期で飲み仲間。
しかも多々勘定をもってもらっている。

寧ろ、私が行くまでに何かを返さねばならないくらいだ。

< 75 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop