はなうらない

飲んでいるグラスに彫られた桜の模様が目に入る。何度もこの居酒屋には来ているのに、初めてそれを認識した。

そういうものが、きっといくつもあるんだろうな。

「正武さんの住む街を見てみたいです」

それを聞いて、なんとなく、八橋さんは寂しがってくれているのかもしれない、と思った。
自意識過剰もいいところだけれど。

「じゃあお願いします」

お会計は久々に割り勘になった。八橋さんがカードを出そうとするのを取り上げて、現金を払おうとしてそれを止められて、攻防戦に店員さんが若干引いていた。

そこを割り勘で落ち着いた。

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