はなうらない
店を出ると、ひんやりとした風が首を撫でる。
秋になるんだな、と夜空を見上げる。
「寂しくなります」
八橋さんはぽつりと言った。
夜空に星は見られない。月もない。
寂しくなりますね、じゃないのか。
私は寂しくないと思われているのか。
「たまに本社来ますし、飲みに行きましょうよ。八橋さんの婚約話を聞かせてください」
「もう、話はきっぱり断りました」
「え?」
そちらを見ると、清々しい笑顔。
「好きな人ができたので」
ばーん、と隕石が降ってきた。
星も見えない夜なのに。
私の上にだけ、隕石が。