はなうらない
「どう? 新拠点は」
「んー、正直初日は泣くかと思った」
「アラサーなのに泣いちゃう?」
「そこはぐっと堪えたよね」
会社なのに二人してはしゃいで喋る。エレベーターに乗り込んで、声を潜めた。
「じゃあさ、明日飲みに行こうよ」
「いいよー華金だね」
約束を取り付けて、私は先にエレベーターを降りた。
久々のフロアに、足が緊張する。
「失礼しまーす」と声を出す。最初に目が合ったのは栃葉だった。
「おはようございます!」
「もう昼だけどね。お疲れ様」
「正武さん、早速なんですけど仕事の話良いですか!」
先輩後輩の間には、再会の余韻というものはないらしい。