贅沢な寂しさ ~身分違いの結婚
3
悠樹の後を付いて 駐車場まで歩いて。
「どうぞ。」と悠樹は 助手席を開けてくれる。
「失礼します。」
初めて乗る 悠樹の車は 白のドイツ車。
少し走って 悠樹が 車を停めたのは
最近 話題のレストラン。
高級な雰囲気に 飲み込まれて。
ソワソワ 落ち着かない私。
「前田さん。嫌いな食べ物は?」
「ないです。何でも 食べられます。」
私の答えに 悠樹は また楽しそうに笑う。
「あっ 副社長。モールに用事が あったんじゃないんですか?」
「いや。外から戻って ちょっと覗いただけだから。大丈夫だよ。」
「あの… 本当に 私… こんな高い物 頂けないです。」
腕に嵌めた時計に そっと触れながら 私は言う。
小さめの文字盤も 輝くブレスも
最高に 気に入っているけど。
もう 外すことさえ 嫌だと思うくらい…
「じゃ 俺に返す?」
悠樹は 笑いを含んだ顔で 私に手を差し出す。
私は 右手で時計を隠すと 首を振ってしまう。
「ハハハッ。」
悠樹は 気持ち良く笑って
「じゃ お返しに 時々 食事に付き合って。」
んっ? どういうこと?
それが どうして お返しになるの?
私の顔は きっと ??? でいっぱい。
「前田さんって 素直だね。」
ニコニコ笑う 悠樹につられて 私が 笑顔になると
「やっと 笑ってくれたね。」
悠樹は 優しく 私に言った。