贅沢な寂しさ ~身分違いの結婚
悠樹と食事をした 翌日。
私は さっそく 新しい時計を嵌めて 出勤した。
「あら。前田さん 時計変えたの?」
横山さんは すぐに 気付いてくれた。
「はい。賞与を頂いたので。記念に買っちゃいました。」
正確には 買ってもらったんだけど…
「すごく素敵よ。前田さんに 良く似合う。」
「ありがとうございます。毎日 時計見て 自分に活を入れないと。」
「フフフッ。前田さんが 頑張っている証しね。」
横山さんは 笑顔で言ってくれたけど。
その日 悠樹のお客さんに お茶を淹れて。
「ありがとう。」
と言う悠樹の視線が 私の時計を捉えて。
ほんの少し 今までよりも 親し気な笑顔を
私に 向けてくれた 悠樹。
私は ポッと頬が 上気してしまい
逃げるように 応接室を出る。
時計を見るたびに 悠樹を思い出してしまい。
私は 自分を 持て余し始めていた。