贅沢な寂しさ ~身分違いの結婚
何度が 食事をするようになっても
私は 悠樹に 個人的なことは 何も聞けなかった。
「前田さん。どうして ウチの会社を選んだの?」
「説明会で 話しを聞いて。すごくいいなって 思って。」
「例えば? どんな所が?」
「女性とか 若い社員でも 頑張れば 認められるとか。」
「ああ。ウチは 若い社員も 頑張っているからね。」
「はい。歴史のある会社なのに。すごいって思いました。だから 伸びているのかなって。」
「へぇ。前田さん そういうことも 気にしたの?」
「もちろんです。入社できたら ずっと働きたいって 思ってたから。せっかく入った会社が すぐに なくなっちゃったら 困ります。」
「結婚したら 辞めたいとか、子供ができたら 辞めたいとか 考えてないの?」
「うーん。相手がいないから。具体的に 想像できないけど… でも 今は 共働きが 普通でしょう? その点でも ウチの会社は 女性のことも 考えてくれるし。」
「前田さんって 働き者なんだね。結婚相手 いないの?」
「えっ! いませんよ。全然…」
「全然って。ハハッ。もったいないね。こんなに 綺麗なのに。」
「綺麗? 私が ですか? まさか~!」
「前田さんは 綺麗だよ…すごく。」
そう言って 悠樹は 珍しく 照れた顔をした。
「止めて下さい。恥ずかしい。」
私は 頬が熱くなって 俯いてしまう。
悠樹が 私を綺麗だと 褒めてくれたとしても
それは 私を 好きってことじゃ ないのに。
恥ずかしくなるなんて 場違いなのに…
その頃から 私は 悠樹と会うことを
待ち望むように なっていた。
ベリーヒルズヴィレッジには
ハロウィンの飾りが増えて。
季節は 秋から冬へ 移ろうとしていた…